獣医師が考えるペットフードについて

 

『医食同源』という言葉があります。体に良い食材を常日頃摂取していれば、特に薬を必要とせず健康
でいられるという中国に古くからある考えを元に、日本で造語された言葉と言われています。
診察中によくオーナー様からフードのご相談を受けることがあります。

私の動物病院はペットショップと併設しているため、迎え入れたばかりの子犬・子猫を連れて来院され
る方が多いですが、飼い始めからどのペットフードが最良かとこだわる方は存外少なく、ペットが食事
に起因する可能性のある病気に陥った時に初めてペットフードについて関心を持ち、調べようとする方
が多いように感じます。食事関連で多い病気に、食物不耐性と食物アレルギーがあげられます。

食物不耐性とは、摂取した食物に対して非免疫性の有害な反応を示す症候群のことで、吸収不良や腸炎
をともなう嘔吐や下痢などを起こします。発症には年齢や品種に関係ないとされていますが、罹患動物
は若い年齢であることが多いように感じます。

原因になりやすい物質として、着色料や保存料などの食物添加剤があげられます。一方食物アレルギー
とは、文字通り摂取した食物に対して体が過剰に免疫反応を起こしてしまい、体のかゆみや嘔吐・下痢
などの消化器症状を示すものをいいます。

現在は、これらの病気に対応する特別療法食が各ペットフードメーカーから開発され、食事単体もしく
は内科的治療と併行して利用されています。食物不耐性は一定期間食事療法を継続することで元のフー
ドに戻しても再燃せずに治療が期待できますが、食物アレルギーは一度発症してしまうと治療しても治
癒することはまれで、療法食によって抑えられていた症状が再発してしまうために元の食事に戻せずそ
のまま療法食を継続するしかないケースや、そもそも療法食が症状軽減に十分な効果を示さないケース
が多いように感じます。

冒頭に戻りますが、どのようなコンセプトのペットフードが理想的であるかを『医食同源』の思想に当
てはめて考えますと、特別療法食のようにある病気に対して特化したフードも必要ではありますが、そ
もそもペットを病気にさせないことこそが重要であると言えます。

近年ではペットに対しても予防医療の考えが浸透しつつあり、毎年人間ドックのような定期検診をペッ
トにも受けさせたいと希望するオーナー様が増えてきています。偏りのない良質なフードをペットに与
え続けるということは、究極の予防医療であると言えるでしょう。


獣医療が発展した昨今でも、ほとんどの場合獣医師は病気が"起こって″から対応することになります。
治療行為とは基本的に″後で″であるため、病気の発症そのものをコントロールできるわけでは
ありません。

良質フードの使用は、先に述べた食物不耐性や食物アレルギーの他に、意図しない様々な病気に対して
の予防にもつながると期待できます。そして将来的にペットとオーナー様の負担や不安を解消してくれ
ることでしょう。

″先手の治療″として、オーナー様が動物病院を選ぶ時と同じくらいフード選びの関心が高まっていく
ことを強く望みます。


    

わたる先生 わたるペットクリニック
     院長 仙田 渉

 

 2007年 日本獣医生命科学大学卒業
 
 卒業後動物病院勤務を経て2015年
 にペット予防医療センターに就職
 
 2021年よりペット予防医療センター
 千葉旭診療所を事業継承し、
 わたるペットクリニックとして開業